労働基準法の基礎知識_02_労働時間・休憩

こんにちは。

はるか社労士事務所の代表の益永です。

『職場における無用なトラブルを根絶したい』
という想いから、労働基準法の基礎知識を
お伝えしていきたいと思います。

本日のテーマは、『労働時間・休憩』です。

労働時間は、従業員のみなさんも
非常に関心が高いテーマであり、

時間外の上限規制や未払残業問題など
労務トラブルに発展しやすいので、
しっかり学んでいきましょう。

<労働時間とは?>

労働時間とは、一言でいいますと


「賃金の支払い義務が発生する時間」

のことです。

過去の最高裁判決(三菱重工長崎造船
事件最高裁判決)では、労働時間とは、


「労働者が使用者の指揮命令下に
置かれている時間」

とされています。

つまり、労働時間に該当するかどうかは、
労働条件通知書や就業規則に書かれて
いる労働時間ではなく、

従業員のみなさんが会社の指揮命令下
におかれていたかどうかで判断される
ということです。

例えば、労働条件通知書や雇用契約書で
始業時刻が9時00分からであっても、

会社から始業前の掃除や朝礼などに
よって、8時45分から会社の指揮命令下
におかれている場合は

8時45分から労働時間に該当し、
賃金の支払い義務が発生します。

<法定労働時間>

労働基準法では、労働時間の上限が
決められていて、原則として、

『1日8時間、1週間40時間』

までとされています。

これを「法定労働時間」といいます。

会社で定めた「所定労働時間」が
上記の「法定労働時間」を超えない
ように決める必要があります。

ここでいう「所定労働時間」とは、
就業規則や雇用契約書などで
決められている、

始業時刻から終業時刻までの
いわゆる拘束時間から休憩時間
を除いた時間のことです。

実際に働いている時間という
ことで「実働時間」と言われたり
もしています。



例えば、

始業時刻:9時00分
終業時刻:18時00分
休憩1時間

であれば、所定労働時間
(実働時間)は「8時間」
ということになります。


あなたの会社の所定労働時間が

①1日8時間
②休日が週1回の日曜日のみ

という労働条件ですと、

①1日8時間・・・○:1日8時間
②1週間40時間・・・×:1週間48時間

となってしまい、


①1日8時間はクリアしますが、
②週40時間を超えてしまうため、



①1日の所定労働時間を短くする。
 例1:1日6時間40分
 例2:平日7時間、土曜日5時間

②休日を増やす
 例:土日休みの完全週休2日制とし、
  土曜日は原則休日出勤してもらう


などの方法で、労働条件を見直す
必要が出てきます。

このお話しをすると、
所定労働時間を超えて働いて
もらうことは違法なのか?

というご質問を頂くことも
ありますが、

所定労働時間を超えて
働いてもらえないわけで
はないです。


ただし、所定労働時間を
超えて働いた場合は、
「残業」扱いとなりますので、

残業代の支払いなどは
別途必要になります。


ここでお伝えしたいのは、

最初から「法定労働時間」を
超える「所定労働時間」で
労働条件を決めないでね

ということです。

なお、1日8時間・週40時間
のルールには、下記のように
一部で例外もあります。

①常時10人未満の特例対象
 事業所では週40時間まで
 設定OK

②変形労働時間制を活用する
 ことで、1日8時間または
 1週間40時間を超える週
 があってもOK

③管理監督者については、
 法定労働時間のルールは
 適用除外となります。

<36協定(サブロク協定)>

原則、1日8時間・週40時間の
法定労働時間を1分でも超えて
残業させた場合は法律違反です。

とお聴きするとびっくりされる方も
多いかと思いますが、

では、法律違反にならないためには
どうすれば良いのか?


そのためには、従業員の過半数代表者
などと、

「時間外労働・休日労働に関する協定届」

という書類を作成して、労働基準監督署
に届け出る必要があります。

これを出すことによって、法律違反だけど
罰則の適用を受けずに適法に時間外労働
や休日労働が可能となります。

これを「免罰効果」といいます。

法定労働時間を超えて時間外労働や
休日労働をさせる場合は、この協定届
を出してくださいというルールが、

労働基準法36条により決められて
いるため、

「36協定届(サブロク協定)」

と呼ばれています。


この36協定届を作成・届出せずに
時間外労働・休日労働をさせた場合、

「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」

という刑罰が法律上定められています。

<労働時間の把握>

正しい労務管理は、適正な労働時間の把握
からはじまります。

法律上も労働時間の把握は義務と
なっています。

労働時間の把握とは、従業員の労働日
ごとに始業・終業時刻と休憩時間を
適切な方法で記録することです。

この適切な方法については、原則として
タイムカード、パソコンの使用記録などの
客観的な方法で行うことされています。


中小零細企業の中には、自己申告制を
採用されているケースもあるかと思います。

ですが、厚生労働省のガイドラインでも


「自己申告による労働時間の把握が
認められるのはタイムカード等による
把握が難しい場合に限られる。」


とされており、把握が難しい場合として、

直行または直帰の従業員で、タイムカード等
による把握ができない場合

とされています。

参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握
のために使用者が講ずべき措置に関する
ガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf

つまり、自己申告による労働時間の把握は
一部の例外を除き、原則、認められていない
ということです。


余談ですが、これから客観的に労働時間
を把握される場合には、タイムカードでも
問題ないですが、

個人的にはクラウド勤怠システムを
おすすめしています。

初期費用なしで、1人300円/円
などで導入できますし、

・リアルタイムで労働時間を把握できる
・休暇・残業申請などもペーパーレス
・印字が薄くて読みにくいなどもない

などのメリットもあります。


当事務所でもクラウド勤怠を導入し、
同じくクラウド給与ソフトと連動させる
ことで、

勤怠と給与の連動はボタン一つで
完了させており、毎月の給与計算に
余計な時間をかけずに済んでいます。

<休憩時間>

休憩時間とは、従業員が労働から離れる
ことを保障されている時間のことです。

休憩時間にもルールがありまして、

①1日6時間を超える場合・・・45分
②1日8時間を超える場合・・・60分

となっています。

もちろん、これより長い休憩時間を
与えることも可能です。

建設業などでは、90分~120分と
されているケースも多いです。

ただし、実態として休憩時間がとれて
いないにもかかわらず、休憩時間を
増やしてしまうと、

現場の従業員の不満へとつながって
いきますし、拘束時間も長くなって
しまうのでご注意ください。


ここでお伝えしたいポイントは、
6時間(又は8時間)「以上」ではなく
「超える」となっている点です。


例えば、9:00~15:00までのシフトの
パートさんは、1日6時間以内のため
休憩は不要となります。

実態としては、お昼をはさむため、
12:00-13:00まで1時間休憩という
会社のほうが多いと思いますが。


なお、その他の休憩時間のルール
としては、

①労働時間の途中に与えること

②従業員に自由に利用させること

③原則として、一斉に与えること

などがあります。

①労働時間の途中に与えるとは、

始業開始前とか終業後に
休憩時間をとらせることは、
できませんと言うことです。

例えば、

「休憩時間45分とる代わりに
いつもより45分早く帰っていいよ」

などの運用はしてはいけません。
ということになっています。

あくまで労働時間の途中に与える
必要があります。

ただし、分割して取得してもらう
ことはできますので、

A 12:00-12:45までの45分
B 16:00-16:15までの15分

AとBを合わせて休憩60分
とすることは可能です。


②従業員に自由に利用させるとは

休憩時間中は、従業員を業務から
完全に解放してあげてくださいね
ということです。

つまり、休憩時間を従業員がどのように
過ごすかについて、会社側が干渉して
はいけませんということです。

ただし、全く干渉できないわけではなく、

・他の従業員の休憩を妨害するような
 行為を禁止する
・休憩時間中の外出について「届出制」
 にする
・一定の場所への立ち入りを禁止する

などは可能とされています。

③原則として、一斉に与えるとは、

法律上、「休憩時間は一斉に与えな
ければならない」とされています。

これを「一斉付与の原則」といいます。

ただし、業種や職種によっては、
「一斉付与の原則」のルールをそのまま
守ろうとすると、当然無理が出てくるため、

一部の業種※については、そもそも、
「一斉付与の原則」の対象外であったり、
※運輸交通業、通信業、商業、保健衛生業
 金融広告業、接客娯楽業、映画・演劇業等


除外される業種でなくても労使間で
「労使協定」を締結することで、


「一斉付与の原則」の適用を除外する
制度があります。

この労使協定は、
「一斉休憩の適用除外に関する労使協定」
などの名称で作成します。

なお、「一斉休憩の適用除外に関する
労使協定」は、労働基準監督署への
届出は不要です。

<まとめ>

今回は、労働時間についてお伝えしました。

労働時間について正しい知識を
もっておらず、

悪気はなかったのに、実は、ずっと
間違った給与計算をしており、
実際の給与よりも低く支払っていた

ということになってしまった場合、
経営者と社員のどちらにとっても
悪い結果となってしまいます。

まずは、労働時間に対する正しい
知識を習得し、もし間違った解釈を
されていたら、

正しい労働時間の把握からはじめて
いきましょう。


なお、法定労働時間のタイトルの
箇所でも解説しましたが、

変形労働時間制を活用することで、
1日8時間または1週間40時間を
超える週があってもOK

とお伝えしました。

この変形労働時間制は実際に現場
で活用されるケースも多いため、

次回の休日に関する解説をさせて
いただいた後に、あらためてお伝えする
予定です。