労働基準法の基礎知識_03_休日

こんにちは。

はるか社労士事務所の代表の益永です。

『職場における無用なトラブルを根絶したい』
という想いから、労働基準法の基礎知識を
お伝えしていきたいと思います。


本日のテーマは、『休日』です。

正しい労務管理をしていくためには、
休日に対する正しい理解も大切です。

特に振替休日と代休の解釈の違いで
従業者とトラブルになったり、

休日の割増賃金への誤った認識から
未払残業または過払いが発生していた
という問題にもつながりやすいです。

職場における無用なトラブルを防止
するためにも、今回の「休日」について
しっかり学んでいきましょう。

<法定休日とは?>

そもそも「休日」の定義って何?

という点からお伝えしますと、
労働基準法上では、

「労働契約上で労働義務がない日」

のことをいいます。


そしてこの「休日」のルールについて、
労働基準法では、

「毎週少なくとも1日の休日を与えること」

と定められています。


これを「法定休日」といいます。

<変形週休制とは?>

「毎週少なくとも1日の休日を与えること」
という法定休日をそのまま守るのは、
業種によっては難しいことも多いです。

そのため、1週間に1日の休日の
適用が困難な場合には、

「4週間を通じて4日以上の
休日を与える」

という方法も認められています。

これを「変形週休制」といいます。


ただし、この方法を利用する場合は、
就業規則等で「起算日」を定めなければ
ならないとされています。

起算日の記載例としては、

①「2024年4月1日」(特定の日付)
②「毎年4月1日」(変動する日付)

などがありますが、

②を選択した場合は、
最終週が4週に満たなくなるので、

この最終週の期間だけは、原則の
1週間に1日の休日で対応するなど
の必要性が出てきます。

<休日は「暦日」で与える>

休日は、原則として

「0時から24時までの暦日」

でカウントします。


単純に24時間休んでもらったから
OKということにはならないので、
注意が必要です。

例えば、

朝8時00分から
翌日の8時00分まで
24時間勤務の場合、


退勤後8時00分から
翌朝8時00分まで
24時間休んでもらい、



再び朝8時00分から
翌日の8時00分まで
24時間勤務といった場合、


0時から24時までの1暦日
ではないので、休日を与えた
ことにはならないという事です。

ただし、例外的に継続24時間の
休みであっても休日としてカウント
可能という方法もあります。

例えば、「番方(シフト)編成による
交替制勤務」の場合などです。

番方編成による交替制による
ことが、就業規則等により
制度化されている

②番方交代が規則的に定められて
おり、勤務割表等でその都度
設定されるものでないこと

という2つの要件を満たせば、
例外的に継続24時間の休み
でもOKとされています。

例えば、

①早番  7:00-15:00
②遅番 15:00-23:00
③夜勤 23:00- 7:00

といった24時間3交代勤務
などの働き方が該当します。

<法定休日と所定休日の違い>

「土・日・祝日」休みのような
週休2日制の場合は、

週2~3日間、休日がとれる
ことになり、週1日の法定休日
以外にも休日が発生します。

この週1日の法定休日以外の
休日は、「所定休日」や「法定外休日」
などと呼ばれます。

法律上の休日なのかどうかの違いで、

①法律で定められた休日が「法定休日」
②会社が任意で定めた休日が「所定休日」

ということになります。

法定休日と所定休日では
割増賃金の計算方法で
違いが出てきます。

法律上、週1回の法定休日に
働いた場合は、

「割増率35%以上」で賃金を
計算する必要があります。

例えば、時給1,000円の場合は、

時給1,000円×1.35=1,350円
×法定休日に働いた時間


日給8,000円で1日8時間勤務
の場合は、

日給8,000円÷1日8時間
=時給1,000円×1.35=1,350円
×法定休日に働いた時間

月給240,000円で月平均160時間
の場合は、

月給240,000円÷月平均160時間
=時給1,500円×1.35=2,025円
×法定休日に働いた時間

などのように計算します。

しかし、所定休日については、
「割増率35%以上」で賃金を計算する
必要がありません。

ここを勘違いされて、休日に対して
すべて「割増率35%以上」で計算
しないといけないと思っていた。

とおっしゃる経営者や人事労務担当者
の方々も多いです。



もちろん法律を上回っておりますので、
休日に対してすべて「割増率35%以上」
で計算すること自体は問題ございません。

なお、原則として所定休日に働くことで
週40時間を超える場合は、

時間外労働として割増率25%以上の
割増賃金の対象にはなりますので、
ご注意ください。

<休暇と休日の違い>

「休暇」と「休日」は言葉が似ていますが、


「休暇」は、雇用契約上は労働する義務は
あるけれど、

「従業員の申請によって労働義務を免除
しますよ」

という日のことをいいます。


「休日」は、「この日に休ませてください」
という申請は不要で、

「契約上でもともと労働する義務のない日」

のことをいいます。


つまり、労働義務があるかどうかで
区別されます。

労働義務がある日に休む
のが「休暇」、

労働義務がない日に休む
のが「休日」

ということになります。

<法定休暇と法定外休暇>

ここでは、法定休暇と法定外休暇に
ついて解説していきます。

下記の休暇は法律上定められた休暇
で従業員から申請があれば、原則と
して与える必要があります。

①年次有給休暇
②産前・産後休業
③育児休業・介護休業
④子の看護休暇・介護休暇
④生理休暇
⑤裁判員休暇

これは「法定休暇」と呼ばれたり
します。

なお、①年次有給休暇以外は、
法律上、賃金の支払い義務は
ありません。

そのため、有給か無給については
会社の判断となります。


私が支援させていただく中小企業
では、無給にされるケースが多い
ですが、

女性の多い職場では、
生理休暇を1日は有給にしたり、
子の看護休暇も有給するなど、

独自の制度で従業員の支援を
実施されているケースもあります。

法定で定められた「法定休暇」以外の
休暇については「法定外休暇」などと
呼ばれます。

一般的には、「特別休暇」や「慶弔休暇」
などと呼んでいるケースも多いです。

具体的には、

①慶弔休暇(結婚や忌引など)
②夏季休暇
③年末年始休暇
④リフレッシュ休暇
⑤バースデー休暇

などがあります。

法定外休暇に対する賃金に対して、
有給または無給にするかについては、
すべて会社の判断となります。

個人的には、無給にされるのであれば
そもそも制度を設けないほうが良いと
考えます。

<振替休日と代休>

「振替休日」と「代休」の違いについては
お客様からも良く聞かれます。

正しく理解をしていないと、気が付かず
未払残業代が発生していたということが
おこりますので注意が必要です。

「振替休日」とは、

あらかじめ休日だった日⇒勤務日に変更
代わりに他の勤務日⇒休日に変更

とした場合、その休日を「振替休日」
といいます。

この振替休日を実施するためには、
下記の要件を満たす必要があります。

①就業規則等で振替休日について
ルールを定めている

②あらかじめ事前に振替日を指定
して、通知すること

なお、事前にとは、少なくとも「前日」
までに通知する必要があります。

振替休日の場合、

「休日と勤務日を事前に入れ替える」

ことになりますので、もともとの休日
に労働しても「休日出勤」にはなりません。

つまり、もともとの休日に労働しても
原則として、休日割増賃金については
不要となります。

また、もともと勤務日だった日に休んでも
欠勤控除も不要です。

一方「代休」とは、上記の「振替休日」の
要件を満たさず、休日に労働してもらい、
その代わりに労働日に休ませることです。

後から代休を与えたとしても、休日に労働
してもらったという事実は変わらないため、

①法定休日の場合は、35%の割増賃金
②法定外休日の場合は、法定労働時間を
 上回った場合は、25%割増賃金が発生
 します。

振替休日は「事前」に通知するが、代休は
「事後」に通知といったイメージですね。

なお、振替休日と代休はともに従業員の
権利ではないため、最終的には会社の
判断となります。

たまに振替休日や代休が当然の権利の
ように主張されるケースもありますが、

振替休日または代休を与えるか、
あるいは割増賃金が発生しても
賃金で対応するかは会社の判断です。

実態としては、代わりに休日がとれる
のであれば、休んでもらうケースが
多いです。

従業員の健康面を考えても、
できれば振替休日や代休で
対応したいですね。

<休日出勤と割増賃金>

休日出勤をした場合の割増賃金は
間違った解釈をしているケースも
ありますので注意が必要です。

休日出勤をした場合の賃金の支払いは
大きく3つにわかれます。

①休日出勤となる場合
②時間外労働となる場合
③法内残業となる場合

①休日出勤となる場合とは、

「法定休日」に休日出勤したケースです。

この場合は、35%の割増賃金の支払い
が必要です。

②時間外労働となる場合とは、

例えば、

・土曜日が「所定休日」
・日曜日が「法定休日」
・平日は1日実働8時間

という場合に、平日は月~金までで
週40時間となります。

この条件で、

土曜日に8時間休日出勤
をした場合

1日8時間の法定労働時間
以内ですが、


週40時間の法定労働時間
は超えてしまうため、

この場合の土曜日の8時間は
すべて時間外労働となります。

つまり、時間外労働の割増賃金
の支払義務の対象となります。

③法内残業となる場合とは、

例えば、

・土曜日が「所定休日」
・日曜日が「法定休日」
・月曜日が「祝日」
・平日は1日実働8時間

という場合に、平日は火~金までで
週32時間となります。

この条件で、

土曜日に8時間休日出勤
をした場合

1日8時間の法定労働時間
以内であり、かつ、


週40時間の法定労働時間
以内であるため、、

この場合の土曜日の8時間は
時間外労働ではなく法内残業の
扱いとなります。

つまり、時間外労働の割増賃金
は不要となります。

その代わり、就業規則等に特段の
規定がなければ、通常の労働時間
の賃金を支払う必要はあります。

もちろん、このケースでも法律上
を上回るかたちで、時間外労働の
割増賃金として支給でもOKです。


従業員数が多くて、時間外労働か
法内残業を判断するのが面倒くさい
という会社では、

法定休日以外の法定外休日は
すべて時間外労働として支払う
という会社もございます。

<振替休日と割増賃金>

振替休日を取得してもらった場合は、
割増賃金は一切不要と勘違いされる
ケースが多いです。

振替休日を取得させるタイミングに
よっては、時間外労働の割増賃金の
支払義務が発生します。

例えば、

・土曜日が「所定休日」
・日曜日が「法定休日」
・平日は1日実働8時間

という条件で、

第1週の土曜日を
第2週の水曜日へ
振替休日とした場合

第1週の週の労働時間は
合計で48時間となって
しまいます。

同一週内※の第1週で
振替休日を取得できれば
割増賃金は不要でしたが、

第2週に振り返ることで
第1週の法定労働時間を
超えてしまい、

第1週の土曜日の8時間分
の時間外労働の割増賃金
の支払義務が発生します。

※同一週内とは、原則として、
日曜日を起算とした土曜日
までの1週間となります。

<まとめ>

本日は、休日について解説を
いたしました。

休日に出勤した際の割増賃金や
振替休日と代休のルールを正しく
理解できていないと、

当然、適切な労務管理ができず、
従業員との間でトラブルに発展
する恐れがあります。


職場における無用なトラブルを
防ぐためにも、休日についての
ルールを正しく理解しましょう。