年次有給休暇の比例付与について
<ご相談内容>
1日7時間勤務で週3日勤務のパートさんの
最初の年次有給休暇は何日付与になりますか?
<ご回答>
正社員と同じ「10日」ではなく、
比例付与として「5日」付与となります。
年次有給休暇は、正社員やパートなどの
区分はなく、要件を満たせば全ての従業員
に対して付与されるものです。
例えば、1日1時間、週1日だけ働くパート
さんであっても、出勤率8割以上であれば
半年後に「1日」付与されます。
<年次有給休暇の付与日数>
1日8時間、週5日勤務などの条件で働く
正社員の年次有給休暇の付与日数は、
法律上は、下記のとおりです。
入社日を起算として、
①6か月後・・・10日付与
②1年6か月後・・・11日付与
③2年6か月後・・・12日付与
④3年6か月後・・・14日付与
⑤4年6か月後・・・16日付与
⑥5年6か月後・・・18日付与
⑦6年6か月後・・・20日付与
となっております。
①~③までは1日ずつ増えていきますが、
④以降は2日ずつ増えていくので注意が
必要です。
また、⑦6年6か月以降(例:7年6か月後)
の付与日数は「20日」のままとなります。
年次有給休暇は付与してから2年間経過
すると時効で消滅してしまうため、
例えば、勤続20年以上の正社員であっても
法的には、有給休暇の残日数は最大でも
「40日」となります。
<年次有給休暇の比例付与>
1日8時間、週5日勤務で働く正社員と
1日1時間、週1日だけ働くパートさんで
有休の付与日数が全く同じだとしたら、
何となく不平等な感じはしないで
しょうか?
そのため、年次有給休暇は、
正社員より少ない労働日数のパートさん
などに対して、
その労働日数に応じた年次有給休暇を
「比例付与」することが規定されて
います。
具体的には、
①週所定労働日数が4日以下
②週30時間未満
の2つの要件を両方満たす場合は、
労働日数の応じて下記の日数が
「比例付与」されます。
引用:厚生労働省【リーフレットシリーズ労基法39条】
ここでのポイントは、
週所定労働日数が4日以下かつ
週30時間未満の「両方」を
満たす場合
となっている点です。
つまり、
・週4日だけど週30時間以上
・週30時間未満だけど週5日
などの条件で働くパートさんは
「比例付与」に該当せず、正社員と
同じ付与日数となります。
<比例付与と年5日の有給休暇義務化>
比例付与で正社員よりも付与日数が
少ないパートさんに対する
年次有給休暇の「年5日」の取得義務
にも触れておきます。
2019年4月以降に年次有給休暇の
「年5日」の取得義務がスタート
しました。
ここでよくある勘違いが、年5日の
義務化の対象は、正社員だけでよい
という考え方です。
年次有給休暇の「年5日」の取得義務
の対象は、正社員とは一言も言って
おらず、
年次有給休暇の「10日」以上の
付与義務がある労働者
とされています。
つまり、正社員以外のパートさんでも
義務化の対象となりうるということです。
具体的に申し上げますと、比例付与
のパートさんでも
①週3日で5年6か月以上
②週4日で3年6か月以上
の勤続年数の場合は、
「10日」以上の付与義務が発生するため、
義務化の対象となります。
<最後に>
今回は、パートさんの比例付与
について解説しました。
年次有給休暇は、経営者は大っ嫌いな方
が多く、俺も有給休暇が欲しいと
言っている方もおりますが、
従業員にとっては、とても関心の
ある制度であり、大事な権利にも
なっています。
最近は、年5日義務化のおかげもあり、
お客様から「パートさんには有給休暇は
発生しないよね?」
と言われることは少なくなりましたが
パートさんも企業にとって、
大切なパートナーです。
年次有給休暇の制度をしっかり
理解して、大切な従業員のためにも、
正しい労務管理をしていきましょう。